わたしの心の故郷
双葉町で過ごした夏
私が双葉町を訪ねるのは、もう十数回目になる。
札幌出身で、今は京都に暮らす私にとって、縁もゆかりもなかったこの町。
けれど、足を運ぶたびに町の過去を知り、人の想いに触れ、心を寄せていくうちに、気づけば「双葉は自分の町だ」と思うようになっていた。
誇らしい気持ち
今回、双葉に滞在していたみんなと何度か海へ行き、さざ波の音を聴きながら、私が大好きな双葉の満点の星空や朝日を一緒に眺めた。
「マジできれい」「こんな星空見たことない!」
自分の故郷を褒めてもらっているみたいで、私を誇らしい気持ちにさせた。自分の故郷じゃないのに、自分のことじゃないのに。
盆踊りの夜
この夏、私は二度、双葉町を訪れた。
一度目は盆踊りの日だったが、台風で中止になってしまった。二度目に訪れたとき、駅西住宅で夏祭りが開かれると知り、心が弾んだ。
昨年、私は双葉町の盆踊りについてインタビューをしていた。だからこそ、いつかその雰囲気を自分の目で見てみたいと思っていたのだ。
夏祭りの日。駅西住宅を、太鼓と笛の音を耳に歩いていると、私がお話を聞かせていただいた、標葉せんだん太鼓保存会・会長の今泉春雄さんにばったりと再会。ようやく、盆踊りで太鼓を叩くその姿を見ることができた。
あの日の言葉に、再会して
やがて、私たちも盆踊りの輪に溶け込むように踊った。
今泉さんが語っていた太鼓や笛の音、歌声を肌で感じながら、笑顔を交わす地域の人々の姿を目の当たりにした。
自分の耳で「双葉盆歌」の太鼓や笛、歌の声を聴き、目で地域の人たちが笑顔で踊る姿を見て、私たちも一緒に踊ったとき——今泉さんの話がやっとわかった。
震災前から続いてきたこの夏の日常が、どれほど大切に受け継がれてきたのかを。その日常を恋しみ、守り続けてきた人々の想いが胸に深く沁み、心の中で点と点が繋がるような喜びを覚え、胸がいっぱいになった。
たくさんの出会いと再会に導かれ、双葉への想いがまたひとつ深まった夏の日の思い出。
Writer Profile
梅田歩佳
北海道札幌市出身、京都市在住。立命館大学4回生。