Special
エッセイ
暮らしの中にある、
相馬野馬追
ある日、相馬野馬追に出陣されている騎馬武者の方の家を訪ねると、居間で縫い物をしていた。作っていたのは、野馬追で身にまとう甲冑(かっちゅう)の膝あて部分。
震災前は、津波で亡くなったお母さんが、縫い物はすべて担ってくれていたそう。
9年ほど前から、自ら甲冑を分解し、見よう見まねで始めて、一式ひととおりつくれるようになったという。
「家族の助けがあったからこそ、出陣できていたんだ」
そう言って、家族とともにあった相馬野馬追の話をしてくれた。
相馬野馬追では、江戸時代などの甲冑を購入し、壊れた鎖や金具を直したり、錆を落としたり、ボロボロになった布や紐を新しいものに交換して、身にまとう方が多いそうだ。
こうして、甲冑をはじめとする武具や馬具を整える方がいれば、相馬野馬追のために馬を飼い、日々世話を続けている方もいる。
それは、言葉にすれば簡単なようだけれど、実際に続けていくのは、決してたやすいことではない。それでも皆さん、とても誇らしそうに、楽しそうに話してくださる。その姿から、野馬追への深い誇りと愛着が伝わってきた。
相馬野馬追が開催されるのは、1年のうち3日間だけ。
それは、圧倒されるほどのかっこよさ!だけれど、それだけでなく、残りの362日も含めて、365日すべての日常の中にある「相馬野馬追」。それがこの地域、この行事のすごいところなのだ。
